銀狐の文具稲荷

-文房具を覆う表現を剥がし愛情を込めて丁寧に貼り付けた簡素な艸菴- (Since 2007-01-04)

余録120 萬年筆奇譚 第4章 疑惑篇1節

リムジンが名取邸に到着すると、門が自動で開く。
大きな和風母屋の横を抜けて離れに停まる。


「後で食料を届けさせて」

「かしこまりました」


そう言い残して運転手はリムジンを母屋に向け走り去った。


「さあ、3人とも入って」


外観は和風の離れだが、内装は大理石が敷き詰められた高級洋式だった。


100畳は超えるであろう大きなリビングに通されると、
巨大なワインセラー。隣の冷蔵庫にはビール等がびっしり並べられていた。


「さぁ、上着なんか取って」


大下が声を出す。


「君は凄いなぁ」


口をずっと開きっぱなしていた水男が言う。


「凄いのは私じゃないわ。パパよ」


「なるほど。うちの企画開発の人間が君たちに熱を上げるのが分かった」


英子を物にしたなら、ラミー電気を手にできる。
技術者なら社の技術者も束ねられるだろうし、知識もある。
そう言いたかったが、水男は飲み込んだ。


「これからは英子と悦子と呼んで」


ワインセラーから白ワインを出しながら、悦子がささやく。

グラスに注ぎ、ワインを飲んでいると
女性達が食料と水を運び込んでくる。

英子は、食料をテーブルに並べさせると、
絶対にこの離れに近づくなと、きつく言う。

女性達は頭を下げ、山城達を見ることなく立ち去った。


「これで、邪魔は入らないわ。朝まで楽しみましょう」


最初は青臭い会話も、酒が回ってくると、
英子は本性を剥き出しにしてくる。

山城は英子を抱えるとリビング横の寝室にドアを蹴って入る。
水男はさらに奥の寝室に悦子の手を引いた。

英子がぐったりしてから山城はリビングに戻り、水を飲んでいると
悦子がよろよろ入ってくる。


英子とは異なりスリムでエキゾチックな顔は、
どこかプライドの高そうな雰囲気がする。
小ぶりな乳房が少し遠慮深い。

山城の体を見た悦子が挑んできた。


英子の寝ている横に悦子を放り出す。

悦子が狂ったような声を上げて気を失ったとき、
空は少し明るくなってきていた。

代わりに起き出し、山城の下腹部を見た英子は
両手を口に当て、目を大きく見開いて


「どうなっているの?」


と、つぶやき体を預けてくる。


それから何回か同時に相手をして、
二人は仰向けになり白い腹が上下する以外動かなくなった。
隣の部屋では水男が毛布を被って眠りこけている。

山城は身支度をすると離れを出て行った。


もう、昼を過ぎた渋谷は日差しがまぶしく、
まだ暑さが残っていた。


タクシーで帰宅した山城は、
シャワーを浴びラフなトレーナー姿でブラックコーヒーをカップに注ぎ
モレスキン紙片を見つめながら飲んだ。

ソファーに座っているうちに深い眠りについてしまう。






泳いでも泳いでも、黒い海の水が襲いかかり、
なかなか岸にたどり着けない・・・・・嫌な夢を見た。



どれくらい眠っただろうか。
携帯電話の着信で目を覚ます。
もう夜だった。


カスタム社長、並木からだった。


「どうだった?」

「参加者達の整理をしているところです」
「秘書の鵜飼さんが来ていました」

「うむ、特定の人物との接触はなかったかね?」

「はい、あれだけの美人ですから、多くの男性に囲まれていましたが」
「特に親しくと言うのはなかったですね」

「そうか・・・・・」
「次に出社した際、聞くとしよう」

「無精ひげが伸びてくるまでお待ちください」


並木は軽く笑って電話を切った。


















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  1. 2017/05/22(月) 00:00:00|
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余録119 萬年筆奇譚 第3章 パーティーの女篇4節

「山城さん、おひとり?」


山城が視線を向けた先に、カスタム社 営業部の長原純子がワイングラスを持って立っていた。
営業で外回りをしているのか少し日に焼けていた。

山城はソファーから体を浮かせ、長原が座るスペースを作る。
山城に尻をぶつけるくらい近い距離に座ると、


「プロフィット社はイケメンばかりだけど、まだあなたのような美男子が居たのね」

「カスタム社も美人揃いで、目のやり場に困ります」


はにかんだ少年のような笑顔を作る。
演技ではないのだが、その笑顔に長原は少し身震いをした。


「せっかくあなたのように素敵な男性と出会ったのに」
「私は、来年の3月で退職するの」

「結婚するのですか?」

「いえ」


首を振ると綺麗な栗色の髪が揺れた。


「父が高齢で家業を継ぐの」

「そうなんですか。失礼でなければどのようなお仕事か・・・・・」

「小さな町工場で、プロフィット社の下請けをしていますの」

「うちの?」

「ええ、年内までに仕上げなければいけない試作があって大忙しです」

「試作って親会社がするものじゃないんですか?」

「今回は材料から手探りみたいなので共同で」

「一日でもお父様のお手伝いをしたいところですね」

「ですが父はこの件が片付いてから帰ってこいと」


話し込む二人を、企画開発の担当者達が気にかけている。
その姿を見た山城は、


「私は経理で現場というのを全く知りません」
「まして弊社の製品となると大いに関心があります」

「いつでもよろしくてよ。あなたなら大歓迎ですわ」


そう言って、バッグを開くとモレスキンとシャンパンゴールドの
パーカーインジェニュイティを
取り出し連絡先を記入しピッとちぎり山城に差し出した。


インジェニュイティ 141105okb01


モレスキンの紙片を眺めながら、


「近いうちにご連絡させてください」

「夜ならほとんど自宅に居ますので」


離れたところから営業部の同僚達が長原を手招きしている。
一礼をして、長原は立ち去った。
長原は、同僚達にどんな話をしていたのか執拗に聞かれる。


紙片を折って内ポケットにしまいながら、
突破口になるかも知れないとぼんやり考えた。


パーティーも佳境、参加者達は連絡先の交換を始めた。
谷口は総務の二人に捕まってヒソヒソ話している。
時折、名取が山城に絡みつくような視線を送る。


トイレを済ませて会場に戻ると、パーティーはお開きになろうとしていた。

鵜飼には近寄らないよう意識していたが、
気づいていないのか一度も話しかけてこなかった。
安堵と同時に少し寂しい気もした。
しかし・・・・なぜ、参加しないようなことを言ったのだろう。


会場を後にしてホテルのエントランスを歩いていると、
数人の女性従業員も山城の後をついてくる。

早めにタクシーを拾って・・・・と考えていると
目の前にひょっこり谷口が現れる。真っ赤な顔をして、両脇に名取と大下がいた。


「これから俺につきあえよ」

「いや、今日は疲れたタクシーで帰る」

「そう言わずに」

「これから私の家で飲み直さない?」


大きく胸の開いたドレスを揺らしながら名取が割り込む。
なるほど・・・・水男を取り込んだ訳か。

後ろをついてきていた女性職員達は嫉妬のまなざしを名取と大下にむけ、
山城を追い越していく。ラミー電気の令嬢では太刀打ちできないのだろう。

一刻も早く帰宅して今日のパーティーで観察した人の動きを整理したかったが、
懇願するような水男の視線を見ると、可哀想になってしまう。


「わかった、水男の顔を立てるよ」

「すまない」


ホテルを出ると、白いリムジンが横付けになって、ボーイが交通整理をしている。
もう一人はドアを開けて頭を下げ待っている。

名取はそんなボーイ達を見ることもなくズカズカ歩き、
山城達にリムジンに乗るよう促す。


男女4人を乗せてもまだ余裕のあるリムジンは、音もなく走り出し
六本木から名取の自宅、渋谷区松濤町に向かう。

名取はケリーバッグを放り出し、ドレスの上着を脱ぎ捨てる。
ノースリーブになったおかげで大きなバストがさらに強調される。

山城の横に座って胸をこすりつけてくる。
向けた顔は唇がめくれ上がり好色なものだった。






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  1. 2017/04/24(月) 00:00:00|
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余録118 萬年筆奇譚 第3章 パーティーの女篇3節

白山は喫茶店のトイレでネクタイを締め、支度を調えた。

支払いカウンターで、アイスコーヒー代を支払う。
ウエイターの目はエメラルドのネクタイピンに釘付けになっていた。


向かいのホテルまで道を横断する。


正面玄関に入ると、谷口がほっとした顔で駆け寄ってくる。

「山城、来てくれたんだね」

「参加すると言っただろう」

「それはわかっていても本当に来るかが不安で」
「お前!凄いネクタイピンだな。本物か?」

「あぁ、でも、そんなに高価じゃないよ」

「お前が時々わからなくなるよ」


受付では、氏名を記入して
透明の名札ケースを受け取る。
そこに名刺を差し込んで胸ポケットにクリップで止めるのだ。

受付カウンターには、カスタムコーポレーション営業部の女性達が座っていた。


「お名前をお願いします」

差し出された記帳用紙に、モンブランNo.149
90周年記念モデルを内ポケットから取り出し記入。

透明の名札ケースを受け取って、谷口に向かって、

「水男、どうして名刺なんだ?大きく名前を書けば良いじゃないか」

「ここがミソなんだよ。名刺の名前なんて小さい字だろう」
「相手の名前を知りたければ近寄らないとダメなんだ」

「さすが企画開発だ」


ホテルの会場を貸し切った立食風のパーティーになっており、
中央にテーブルが10ほど並んでいる。
テーブルの上には豪華な食事やオードブル。

部屋の端には大きなソファーがいくつも並べられていた。
所々に、うどんやローストビーフのコーナーも。

当初未だ馴れていないのでめいめいソファーに
男性、女性別れて座って話し込んでいた。


「全部で50人くらいか」

山城はつぶやいた。



会場のコーナーから、本日の幹事2名が挨拶をする。
乾杯の音頭は、谷口の紹介で、秘書課の鵜飼玲子が勤めた。

チョコレート色のパンツ姿だった。
いつもスカート姿なので新鮮な感じがする。


ウエイターが各テーブルにビール等を運んでくる。
最初はぎこちなかった参加者も酒も入って、次第に打ち解けていく。


皿に食べ物を取り、ビールを飲んでいると、
総務課の名取と大下が息を弾ませてやってきた。


「はじめまして、お名前をお教えください」

大下がしゃべり終わらないうちに、
名取は「私、名取と言いますよろしくね」

「大下です、はじめまして」


こいつら・・・・・気づいていない。


「山城晶夫です。よろしくお願いします」

ゆっくり一礼をする。


「今日は来る予定じゃなかったんですけど、欠員が出て」
「玲子に無理矢理連れてこられました。でも、よかったです」

大下は白いドレスをゆっくり揺らしながら語る。

「パーティーは初めてですか?今まで見かけませんでしたから」

名取も負けじと質問してくる。

「はい、水男・・・いや谷口幹事に誘われて」



その二人の後ろには、プロフィット企画開発軍団が
話しかけたそうにモジモジしていた。

谷口が気を利かせて、

「後ろにもイケメン達がおりますので」

山城から二人を引き離した。


「やっぱり、お前が一番モテている」
「女性職員達から山城の名前と部署の質問攻めだ」

グラスをあおり、少年のような顔で歯を見せ笑うと、
谷口ですら口をあんぐりと開けたままとなった。



薄暗いバーカウンターで、カスタム社長、並木の携帯電話が鳴る。
ウイスキーを口に運ぶのを止め、電話に出ると、
プロフィット社長、坂田匠だった。

「並木です」

「久しぶりだな坂田だ」

「今夜はパーティーでうちの女性職員がお世話になっています」

「うむ、紛れ込んだネズミが本格的に動き出した」

「そうですね、うちも猫を放します」

「あぁ、私も手を打ったところだ」

「ところで、新商品の開発具合はいかがですか?」


並木の横に座っている若い女はダンヒルをくわえ
デュポンのライターで火を付ける。
キーンという乾いた金属音を発し火は消された。

並木はちらりと女に視線を向ける。
女は火を付けたタバコを並木の口に持って行く。


タバコを口にくわえると、
右手に携帯を持ち直し、左手人差し指で
プロフィット社秘書 長沢の背中をすーっと撫でる。
長沢は背を反らし曇った声を出した。










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  1. 2017/03/27(月) 00:00:00|
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余録117 萬年筆奇譚 第3章 パーティーの女篇2節

二人のエステティシャンの前でバスローブを脱ぎ
中央のベッドで仰向けになる。

一人は下半身にバスタオルを掛けてくれた。

オイルを垂らして全身をほぐしていく。
柔らかい筋肉には女性の指が刺さるように入り込む。

ネイルと髭を剃ってもらう。
女性の勧めで少しだけ髪をカットした。



入店してから2時間半。
ジーンズにポロシャツを着て受付に姿を現す。

クレジットカードを差し出し、

「ありがとう、またお願いするね」

「ぜひお越しください」

クレジットカードと利用明細。
さらに会員証を両手で返しながら笑顔で答える店員。


白山が店を出ると、

「白山様・・・・来た時と帰る時。全く雰囲気が変わるわね」
「それも月1回ルンペンみたいになって現れて」

「でしょう?何をしている人かしら?」



M3が自宅駐車場に停められた時には日は落ちていた。

腕時計で時間を確認した白山は、
自宅に入ってパーティー用の服を選ぶ。

パーティーといっても、所詮企業の合コンのようなもの。

淡く華やかなスーツに濃い緑のネクタイ。
そしてエメラルドのタイピンとカフス。


自宅にタクシーを呼び、ネクタイ、カフスはポケットにねじ込んで乗車。
運転手に会場になっている、六本木の高級ホテルを告げた。


ホテルと道を挟んだ向かいに停車させる。
パーティーが始まる40分ほど早く到着した。


ホテル入り口が見渡せるビルの喫茶店。
窓際に陣取り、アイスコーヒーを注文。

RHODIA No.12とモンブランNo.149の90周年記念モデルを
取り出して、双方企業の来場者をチェックする。


モンブラン マイスターシュテュック 149 90周年記念 10171910_10152081233752861_5542575530997156266_n RHODIA No12 10523866055




一番乗りは、幹事になっている
谷口水男と、カスタムの女性社員だった。

「確か彼女は経理だったかな?」

プロフィット男性職員が数人現れた。
企画開発の連中だ。

タクシーが横付けされて女性職員が3名ほど。
営業部門の職員。

総務課の男性職員も来た。


真っ白なリムジンが止まる。

「・・・・?」

総務課の名取英子と大下悦子だ。
名取はピンクのドレスにケリーバッグをぶら下げている。
巨大なバストを強調するように、胸元が開いている
大下は真っ白で清楚なドレスだ。

確か・・・・名取は・・・・・
ラミー電気の娘だったっけ?
大下の家も・・・・シェーファー重機を経営していた?


「ダメだプロフィットの社員がよくわからない」
「あまり顔を見せていないからなぁ」

もう、パーティーも始まりそうだし、
そろそろ向かうか。


席を立った時、徒歩で現れた女性に驚く。



「鵜飼玲子・・・・・」




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プロフィール

銀狐

Author:銀狐
雲の近くで紙と筆。本と工藝。
旅・食・美・創・観に魅せられ
鳥・虫・石・艸・風と交わり 閑暇を纏う。

強烈な文具好き。
LAMYとrotringの熱烈な信者であり、
montblancに憧れ、pelikanを愛し、
moleskineを人生のパートナーに迎え、
RHODIAを愛人にして、
Rollbahnと浮き名を流す。

burlingtonにトラベラーズノートと
ファーバーカステルを詰め、
PerkerとfILOFAXを広げた所が書斎。

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