銀狐の文具稲荷

-文房具を覆う表現を剥がし愛情を込めて丁寧に貼り付けた簡素な艸菴- (Since 2007-01-04)

余禄88 三島由紀夫と司馬遼太郎

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『三島由紀夫と司馬遼太郎』 著者・松本健一
 (新潮選書・1260円)



昭和を代表する文学者と、広範な読者を持つ国民作家。
二人を比較しながら、戦後日本が失ったものを浮き彫りにした評論だ。


二人の対立構図と共通点を明快にさし示し、さまざまに考えるヒントをくれる一冊になっている。



1970年11月。三島の自衛隊駐屯地での割腹自殺を司馬は「さんたんたる死」と全面的に否定した。
この事件は、以後の司馬の仕事に大きな転回点をもたらしたのではないかという。


司馬の紀行シリーズ「街道をゆく」で気づいたことがある。
天皇の物語がないのですね。あるのは、苦労して米を作ることや技術をいかにして培うかといったこと。
天皇に言及することを意識的に避けている。
ところが、このシリーズが始まったのは三島の自決直後なんです。

そう記してある。



三島が追い求めた「美しい日本の原理としての天皇」。
そんな美学に対峙するように、もう一つの肯定的な日本を求めて
「街道をゆく」の旅が続けられたというのだ。



三島事件をはさんで書かれた司馬の代表作『坂の上の雲』でも、同様の問題意識が見られるという。
日露戦争を天皇の戦争ではなく、国民の戦争として描いています。
軍神といわれた乃木希典の偶像を破壊し、逆にリアリストの正岡子規や秋山兄弟を中心に据えました。



一方で、司馬は芸術家としての三島を高く評価していた。
特に称賛したのは小説『午後の曳航』。
「芸術至上主義的な名作と最大限の評価を与えています」
三島のロマン主義的精神に、現実主義者の司馬が一瞬、交差したのだと指摘する。



三島は戦後日本を「無機的」「からっぽ」と全否定した。
その死から二十数年後、司馬はバブル経済に狂奔する日本を激しく批判した。

「空虚な大国になった日本を憂える点では共通しています」

ありうべき日本とはどんな姿をしているのか。
二人の問いかけは今も生き続けている気がしてならない。


何が「からっぽ」を埋めるか・・・・・・




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  1. 2012/01/16(月) 00:00:00|
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Author:銀狐
雲の近くで紙と筆。本と工藝。
旅・食・美・創・観に魅せられ
鳥・虫・石・艸・風と交わり 閑暇を纏う。

強烈な文具好き。
LAMYとrotringの熱烈な信者であり、
montblancに憧れ、pelikanを愛し、
moleskineを人生のパートナーに迎え、
RHODIAを愛人にして、
Rollbahnと浮き名を流す。

burlingtonにトラベラーズノートと
ファーバーカステルを詰め、
PerkerとfILOFAXを広げた所が書斎。

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