銀狐の文具稲荷

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余禄75 中小企業は進化する

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『中小企業は進化する』=中沢孝夫・著

(岩波書店・1995円)





大量生産から多種多様の「ものつくり」へ

「“同じ”の時代から“違う”の時代へ」日本企業は進まねばならない・・・・

先端技術である液晶、プラズマの大画面テレビで、
ソニーなど日本の超大企業が世界市場で苦戦して、巨額の赤字を続けている。

それは、テレビはどこの国のどの企業がつくってもほぼ同じであり、
大量生産の得意な韓国、台湾との価格競争がきわめて厳しいからだ。

一方、工作機械は多種多様であり、
非常に多くの企業があってそれぞれ得意な製品を持つ日本は、
世界で断然強く、25年間も市場シェアトップを続けている。

“同じ”ものを大量につくっている大企業とは異なり、
中小企業はそれぞれに“違う”ものをつくっている。
日本の製造業がこれから進むべき道に向いているのだ。


著者は、現場を訪ねて綿密な調査をする中小企業研究者であり、
数多くの元気いっぱいの企業を紹介している。
それを基に、中小企業の現在、将来をどう見るかの論を展開しているが、
その基調は、題のとおり“進化”であり、これからも強くあるべき日本の
“ものつくり”を託すことができると分かる。


まず福井県の企業を挙げているが、福井市にある秀峰(しゅうほう)は、
曲面に印刷可能な機械を開発して、世界中から携帯電話機の表面の印刷を受注している。

携帯電話機のアンテナを印刷によってとりつける技術も開発していて、
キャッシュカードなどにも応用されている。
鯖江市の西村金属は、加工が困難なチタンで微細加工の技術を開発して、
メガネフレームのネジづくりから始めて、フレーム全体をつくっているが、
いまでは半導体から医療機器、航空機の部品の加工に手を伸ばしている。


長野県の駒ケ根市をご存じの方は多くはないだろう。
ここにある塚田理研工業は、プラスチックへのメッキをボタンから始まって、
自動車、カメラ、パソコン、携帯電話機などさまざまな部品で行っていて、

日本を代表する企業であるが、排水処理とリサイクルに力を注いで、
きわめて高度なシステムを完成している。日本ならではのものであり、
これもやがて世界に向けたビジネスになるだろう。

天竜精機は、自動車、電機、半導体などの加工、組立機械を開発、生産する企業だが、
「どんな自動機でも手がけ、一品一様の専用機をつくる」という。


このような元気いっぱいの企業は、日本中にある。


これらの企業は独自技術を開発しているが、中小企業には、大企業の下請けが多い。
だが、大企業が次々と経営不振に陥っている中で、下請け企業ももがきながら進化していく。
そうでないと倒産するからだ。


横浜にある吉岡精工は、バルブ金型をつくっていた企業だが、
30年前は下請け指向型で親会社に依存していた。
だが、確かな生産力を持ち、系列の一員として存在する系列指向型に変わり、
10年前から開発力を持ち顧客に案を出す提案指向型に進み、
いま、マーケティングもするブランド指向型を目指している。
まさに進化であり、多くの中小企業が、そうした方向に進み始めている。


大企業の側も、下請けとしてしばることは止(や)めている。
厳しい情勢の中で、頼られても困るのであり、広く他社に向けての生産を認めて、
自立してほしいのである。著者は、下請け企業とは言わず、協力メーカーとしている。
大企業と対等の関係に近づいているのだ。


中小企業に対する見方を変えねばならない。
かつては、二重構造論があって、進んだ大企業に対して、中小企業は遅れていて、
低賃金、低い労働生産性の問題を抱えているので、
それを是正するのが課題であるとされた。
確かに給料は大企業の6~7割と少ないが、労働者の諸条件を考慮すると、2割ほどの差だ。

一方で営業利益率を見ると、10%を越える高い利益を上げている企業の比率は
大企業が8.8%であるのに対して中小企業は13.4%である。
しっかりと儲(もう)けている企業は、中小企業の方が多いのだ。
それは“違う”ものをつくっているので、テレビなどのように過当競争に陥ることがないからだ。


そこで、中小企業に関する政策も変わってきている。
全体の底上げ、格差是正ではなく、新しいものに挑戦し、頑張っている企業を支援しようというものだ。
それは手厚いものであり、いまでは資金調達、税金などで、中小企業は有利になっている。


課題は、人材の確保だろう。先に挙げた地元で評判の会社は苦労しないのだが、
一般にはできる人を採用するのがたいへんだ。

そこで、中小企業のイメージを大きく変えることが必要になる。
日本の製造業は、さまざまな面で大きく変わろうとしている。
その一つが、機械、機器の部品で勝負していくことだ。

いまは、部品にこそ高度な技術が必要になっていて、
携帯電話機が典型であるように、日本が大いに力を発揮している。
部品の大半は中小企業が担っていて、これからいっそう大きな役割を果たすのである。


とまあ・・・・・
これを読みふけった後、皆さんも承知の、
「TOYOTAリコール問題」若干米国の執拗な叩きにも映るが、
高品質を誇る我が国のものつくり神話が崩壊の片鱗を見せている。

物を作る技術や研究も大切なことではあるが、
ネガティブな情報も積極的に開示するという、
消費者の信頼を得る戦略も同時に求められているのかも知れない。






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  1. 2010/05/10(月) 00:00:00|
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Author:銀狐
雲の近くで紙と筆。本と工藝。
旅・食・美・創・観に魅せられ
鳥・虫・石・艸・風と交わり 閑暇を纏う。

強烈な文具好き。
LAMYとrotringの熱烈な信者であり、
montblancに憧れ、pelikanを愛し、
moleskineを人生のパートナーに迎え、
RHODIAを愛人にして、
Rollbahnと浮き名を流す。

burlingtonにトラベラーズノートと
ファーバーカステルを詰め、
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