銀狐の文具稲荷

-文房具を覆う表現を剥がし愛情を込めて丁寧に貼り付けた簡素な艸菴- (Since 2007-01-04)

余禄72 ハチはなぜ大量死したのか

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『ハチはなぜ大量死した…』=ローワン・ジェイコブセン著

(文藝春秋・2000円)


ミツバチについて、一昨年から奇妙な報道があった。
主にアメリカでの出来事だが、なぜか働き蜂が巣に帰ってこない。
残されたのは女王と幼虫、結局巣は潰れてしまう。
かといって、どこかで大量の死体がまとまって見つかったわけでもない。
人によってはこれをイナイイナイ病と呼んだ。(いないいないばぁ~ だ)

「2007年の春までに、実に北半球のミツバチの四分の一が失踪(しっそう)した」
それがいったいどういう現象であるのか、しっかりと解説したものである。
真剣に考えると、なんとも恐ろしい本である。


この「蜂群崩壊症候群」の原因は単一ではない。
最大の背景は工業化された農業。それがハチたちに強いストレスを与え、
免疫抵抗性を弱め、ダニやウィルスに対する防御を弱めた。
そこに農薬の複合汚染が重なり、精密な社会生活を営むミツバチの巣全体の活動を
いわばアルツハイマー状態に陥れた。
病み疲れた働き蜂たちは、採餌に出た先で倒れ、巣には戻れず、おそらくただ死んでいった。


著者はミツバチの正常な生活からはじめて、
ハチたちが農業という経済活動に組み込まれていったいきさつ、
ハチにどのような病気が発見されたか、などについて、きちんと報告していく。


「もう一つの人間社会」を見る思いだ。


この現象はアメリカでとくに問題になった。
アメリカの農業、とくに果樹園のように授粉が必要なところでは、
ミツバチの存在が不可欠だったからである。

ハチに蜂蜜(はちみつ)を作らせて販売するより、
求めに応じて、アメリカ全土の果樹園にハチを連れ歩いたほうがお金になる。
だから打撃を受けたのは養蜂業だけではない。
果樹園も同じだった。たとえばカリフォルニアのアーモンド畑の場合、
アーモンドだけが植えられている。
自然の世界として考えたら、一種類の木だけが延々と植わっている光景は異様としかいいようがない。

しかも加州のアーモンド畑の総面積は三千平方キロ。
そこにはアーモンドの木以外にはなにもない。当然虫もいるわけがない。
それなら授粉はミツバチに頼るしかない。
開花期には一箱いくらの契約で、養蜂業者がそのミツバチを連れてくる。

ミツバチの立場になると、あちらもこちらもアーモンドの花ばかり。
すべての栄養をミツバチはアーモンドから摂取する。

野生状態ならまさに百花繚乱さまざまな花から花粉と蜜を採ることができる。
それなら「自然に」栄養のバランスをとることもできよう。
しかもその畑には、かならずなにか農薬が撒かれている。
ミツバチは需要に応じてあちこちを連れ回される。

微量とはいえ、あっちではこの農薬、こっちではあの農薬。科学者の調査によれば、
なんと十種を超える農薬を含んでいた個体もあったという。

即座にハチを殺すほど強力でなくても、虫に対する毒を長い間に溜め込んだハチは、
正常に動けるのか。むしろアルツハイマー状態になって当然ではないか。


ミツバチが消えることになって、さすがのアメリカでもこういう本が出版されるようになった。


もはや手遅れではないか。
いまだってまだ、一定の経済成長を保つのが政府の仕事だと思っている人が多い。
他方で環境省は省エネという。省エネや排出権取引を商売にして、
経済と環境を折り合わせようとしているのは、はたして人類の知恵か、
その場逃れか。

昨年の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、
皆さんは、つまらない各国の主張を見聞きしただろう。
未だにこの有様だ・・・・・・

人類がミツバチの運命をたどらないことを祈る。





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  1. 2010/02/15(月) 00:00:00|
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Author:銀狐
雲の近くで紙と筆。本と工藝。
旅・食・美・創・観に魅せられ
鳥・虫・石・艸・風と交わり 閑暇を纏う。

強烈な文具好き。
LAMYとrotringの熱烈な信者であり、
montblancに憧れ、pelikanを愛し、
moleskineを人生のパートナーに迎え、
RHODIAを愛人にして、
Rollbahnと浮き名を流す。

burlingtonにトラベラーズノートと
ファーバーカステルを詰め、
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