銀狐の文具稲荷

-文房具を覆う表現を剥がし愛情を込めて丁寧に貼り付けた簡素な艸菴- (Since 2007-01-04)

余録112 萬年筆奇譚 第1章 水先案内篇1節

「ねぇ、アイツ。今日は出勤みたいよ」

オフィスの化粧室。
頬を赤らめ唇をとがらせ、名取英子が同僚の大下悦子にささやく。

「そうなの?たまにしか会社に来ないのね。よくわからない人だわ」

「経理の娘がエントランスで見たらしいわ」

「体調でも悪いのかしら?」

「さぁ、でね、出社すると社長室に呼び出されているらしいわ。クビも近いかも」


さらに小声で顔を寄せてくる。
少々キツイ香水の香りが鼻腔を刺激する。

「英子、今日は合コンなの?」

「わかった?パーティーよ。ライバル会社のイケメン達なのよ~。悦子もどう?」

「私は遠慮しておくわ」

「会社はライバルでも社員の交流があっても良いじゃない」





寝癖のついた髪で、ヨレヨレのスーツと歪んだネクタイ。
黒縁の大きなメガネ。そして無精髭。
あくびをしながら「おはようございま~す」と、アイツは出社してきた。


銀縁メガネの奥、陰湿そうな目で白山峰夫を上から下まで一瞥する。
総務課長の草野信二だ。


肩をすくめながら好奇の眼差しを向ける社員達。


全く意に介さず、白山は慣れた手つきでコーヒーサーバーから
ディスポカップにブラックを注ぎ、デスクに座る。

ゆっくりコーヒーを飲みながら、朝刊を眺める。




空調が完備された広いオフィスに
差し込んでいた直射日光も無くなっていく。





秘書課から草野課長のデスクに内線が入る。

「白山君、社長がお呼びだ。すぐに行きなさい」

「はい」

白山は、デスクの引き出しを開る。
10本以上並べられたモンブランNo.149の中から開高モデルを取り出し、
ヨレヨレのスーツの胸ポケットに差し込みながら、
ゆっくりとした足取りでオフィスを出て行く。


モンブラン No149開高モデル 9fc91a3b



「呼ばれたわね~ これでおしまいじゃないかしら」

「英子、嬉しそうね~」

満面の笑みを浮かべる英子に
半ばあきれて悦子が言う。





社長室に向かうエレベータを待っていると、
良い匂いが漂ってくる。

「白山さん、ボスのお呼びですか?」

振り返ると、秘書の鵜飼玲子がほほえむ。

「あれ?鵜飼さんが電話してきたんじゃないの?」

「違うわ、他の秘書ね」
「私は、経理と総務をまわってきたところ」

「ねぇ、それモンブランですね?」

「はい、149です。」

ポケットから抜き出しながら、鵜飼に差し出す。

「No.146を持ち歩く人は多いけど・・・・・」

「私はNo.149が好きなんです」

「そうでしたか。私はグレタ・ガルボを迷っているわ」


モンブラン グレタ・ガルボ 1996566300_n モンブラン グレタ・ガルボ DSC06715-640


「普段は、コレ」

そう言って、ウォーターマンのル・マン100 サントネールをポケットから見せる。

「100周年記念モデル。良い好みですね」


ウォーターマン サントネール 3717001825385_2 ウォーターマン サントネール 3717001825385_3 ウォーターマン サントネール 3717001825385_4




社長室のある7階にエレベータは止まった。
秘書の鵜飼玲子と一緒に下りて、社長室に向かう。

すれ違う部長級幹部達は、社長に叱られたのか、
あまりいい顔色をしていない。


「少しお待ちになって」

そう言うと鵜飼は秘書室に入り、社長室の確認をする。

「白山さんがお越しです」

「入れ」

奥から主の声が飛んできた。





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銀狐

Author:銀狐
雲の近くで紙と筆。本と工藝。
旅・食・美・創・観に魅せられ
鳥・虫・石・艸・風と交わり 閑暇を纏う。

強烈な文具好き。
LAMYとrotringの熱烈な信者であり、
montblancに憧れ、pelikanを愛し、
moleskineを人生のパートナーに迎え、
RHODIAを愛人にして、
Rollbahnと浮き名を流す。

burlingtonにトラベラーズノートと
ファーバーカステルを詰め、
PerkerとfILOFAXを広げた所が書斎。

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