銀狐の文具稲荷

-文房具を覆う表現を剥がし愛情を込めて丁寧に貼り付けた簡素な艸菴- (Since 2007-01-04)

余録125 萬年筆奇譚 第5章 尋問篇3節




「わかっていないわね」
「質問する権利は私にあるのよ」


鵜飼はグラスの赤ワインを飲み干す。
かわって白山は、口の周りをナプキンで拭き取りながら


「そうだったね。それは失礼した」
「俺はカスタム社からプロフィット社に送り込まれたスパイだ」

「表向きはね」

「スパイに表向きも裏向きもあるものか?」


遅れてナプキンを口に当てながら、鵜飼は続けた。


「ごくごくありきたりの意見で終わりにはならないわ」

「それ以上言いようがないんだが・・・・」


鵜飼は立ち上がると服を脱ぎ始めた。

小柄で均整の取れたプロポーション。
小ぶりの乳房。左右に向いた淡い色の乳首が可愛かった。
白く薄いショーツは、陰毛のない股間を透かしていた。

脱いでいく鵜飼を眺めながら、


「躰で白状させるつもり?」
「君こそスパイか特殊部隊の女兵士だね」
「本社玄関での身のこなしといい」

「手合わせしてみる?ベッドでも拳でもかまわなくてよ」


ショーツ一枚を残した姿で白山の膝上に座りこみ唇を吸う。






「男なんてと、自信はあったんだけどね」


3時間後、俯せで鵜飼玲子はつぶやいた。


「いや、なかなか良かったよ」

「意地悪をしておいてよく言うわ」


白山は鵜飼が頂点にさしかかる寸前に腰を引いて抜き出し、
何回も焦らして半狂乱にさせた。


「お預けの後のご褒美は旨いものだよ」
「かの千利休も冷たい茶を馳走するのに、客人をわざわざ山道を歩かせて
茶室に案内し汗をかかせたそうだから」


まだ天井を向いているモンブランNo149のような太くて長いモノを見せつける。

よろよろと口だけを近づけ咥え込もうとする鵜飼。


さらに2時間後。


「次は拳で勝負しようか?」

「いじわる。動けないことを知っているくせに」

「では、形勢逆転だ。君のことを教えて貰おうか?」

「もう一回満足させてくれたら」


少女のような笑みを浮かべて、四つん這いの姿勢を取る。


日付が変わった夜中。
鵜飼玲子は死んだように動かなくなっていた。

その頬を叩いて起こすと、


「No146ではなくNo149なのね」

「なんの例えだ?」
「秘書がGT-Rなんてありえないだろう。スポンサーは誰だ?」

「私は、カスタム社に送り込まれたスパイ」
「そしてプロフィット社の秘書もスパイ」

「互いにスパイを送り合っているのか?」

「そう」
「だからあなたが2社のスパイでないことは分かる」

「何のために?」

「お互いを監視して共同でできるところは手を結ぶためよ」

「だから特許の融通や製品開発手法が類似している」
「そうしておいて裏切りは許さないということか・・・・」





「ご主人様?ご褒美は?」

「まだ欲しいのか?」

「最中は、もう、堪忍してと思うんだけど、30分もしないうちにまた・・・・」


と、股間を押さえて、丸めて押し当てられたティッシュをゴミ箱に投げる。


白山はニヤリと笑いながら、


「言い忘れていたことが一つある」
「コイツには即効性がある代わりに常習性という副作用もあるんだよ」


「まだ夜は長いわ」













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  1. 2017/10/23(月) 00:00:00|
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余録124 萬年筆奇譚 第5章 尋問篇2節

「白山君」



不安げに呼び止めた鵜飼いの顔が、振り返った山城の顔を見ると、
自信と確信に変わる。今まで見たことのない笑みを浮かべると、

歩を進め近づき、小声で


「思った通り!」


折りたたんだメモを差し出しながら、


「仕事が終わったら帰宅する前に連絡して」

「山城です。何かの間違いでは?」


今更・・・・・何?という目で可愛く睨みながら。
口をとがらせた後、ニコリと微笑んだ。


カスタム社に居ることから、白山モードが出てしまった。
そう悔いたが・・・・・・すでに遅かった。






18時、初日の仕事が終わった。

プロフィット社の同僚を見送ってから
鵜飼のメモに記された番号に電話した。

鵜飼のプライベート用の携帯電話番号のようだった。


「いま、仕事が終わった」

「よかった、私も今から出るわ。玄関で・・・・」


数分後、エントランスで待っていると
玄関に鵜飼いの乗った白の日産GT-Rが滑り込んできた。

いくら大企業とはいえ、秘書で1000万円を超えるGT-Rは持てないだろう。
きっとスポンサーが居るに違いないと、山城は少し警戒した。


「おまたせ」


シルバーのパンツに淡い紫色のブラウスで車を降りてきた。

山城の背後からヒールで駆け寄ってくる音がする。


「山城さんを連れて行くつもり?」
「そうはさせないわよ」


事務服のまま名取と大下がフウフウ言いながら駆け寄ってくる。


「申し訳ないですが、今日は先約です」


静かな口調で鵜飼いが二人に言う。


「秘書が偉そうに言うんじゃないわよ」


そう言うと名取は大きく腕を振りかぶって、
鵜飼の頬を叩こうとする。

鵜飼は一瞬のテイクバックでそれをかわすと、
軽く右手の甲をコツンと名取の顎先端に触れさせる。


「二度目はありません。今度はこの顎砕きましてよ」


名取は腰が抜けたようにオロオロと後ずさり、黙り込んだ。
鵜飼は助手席のドアを開け、山城にむかって笑みを浮かべた。

その笑顔に山城も、不敵な笑顔で返しGT-Rに乗り込む。


「君には驚かされるな」

「私もあなたには驚かされているわ。」
「さぁ~て、白山君、山城さん・・・・どちらでお呼びすれば良い?」


クククとサディスティックな含み笑いをすると、
代官山のホテルにGT-Rを向けた。


すでに渋滞が始まろうとしている渋谷駅を避け、
細い路地に車を向け、大柄なGT-Rを軽くいなす。

時折速度を上げるが、要所では充分に減速させ、
安全を確認する。

スリリングなドライブではあるが、
妙に安心してシートに身を任せられる。

白山は窓の外に視線を移し
何を考えるでもなく、ぼんやりとした。



「いつ気がついた?」


ルームサービスで届けられた夕食をほおばりながら白山が聞く。
鵜飼の申し出で、白山の方が呼び慣れているからそうしてくれと言われた。


「パーティーの日」

「君は近づいても来なかったし一言も話していない」

「怪しければ無駄に近寄らないわ」

「ほぅ~、すでに怪しかったか」

「モンブランNo149よ。それで記帳していたもの」
「あれを持ち歩く人・・・・そうそう見ないわ」
「後ろで見ていたの。今も持っているんでしょ?」

「ああ」


そう言って、内ポケットから1本抜き出す。


「毎月1回ルンペンみたいな格好で出社して社長室へ。怪しすぎるでしょ」
「どうせやるならもっと上手にやりなさい」

「今度から気を付けるよ」

「で?、白山君は何者?」

「君もただの秘書ではないね」
「なぜ俺を誘った?」


赤ワインのボトルを鵜飼のグラスに傾けながら、
視線を鵜飼に向けたまま訪ねる。


「わかっていないわね」
「質問する権利は私にあるのよ」


ニヤリと右の口角をわずかに上げ微笑を浮かべる。
しかしその笑顔は凍り付くように冷たかった。













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  1. 2017/09/25(月) 00:00:00|
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余録123 萬年筆奇譚 第5章 尋問篇1節

ホテルの一室。


女が男にまたがり腰を振っている。


髪を振り乱しながら腰を振っているのは、
プロフィット社 秘書の長沢枝美子だ。


「で?そのことを彼に話したというの?」

「そ、そうだ。」


谷口が女の下、腹で呼吸していた。


「アナタ、おしゃべりね」





「うっ、彼は信用できるよ」

「どうして言い切れるの?」

「だって、この開発商品の情報を持ってきたのは彼なんだから」


長沢は腰の動きを止め、
谷口を見下ろす眼が大きく開かれた。


「彼が持ってきたの?」

「そうだ」


谷口からゆっくり視線を天井に上げ、ニヤリと笑う。


「アナタって、本当におしゃべりね」


そう言うと腰を捻った。


「うううぅ」


大きな声を出して谷口は果ててしまう。



長沢枝美子は、谷口の体を降り、
そそくさとシャワー、身支度を済ませ
出て行ってしまう。


ホテル地下駐車場、グレーの
FIAT500アバルト 695 BIPOSTO に乗り込み、
長沢は大声で笑い出す。

ひとしきり笑った後、


「可愛い顔して・・・・・何者なの?」


ルームミラーをにらみつけた。




「山城君」

山城は、経理部長に呼び止められた。


「来週3日ほど、カスタム社に出張してくれるか?」

「カスタム社ですか・・・・?」
「なんでしょう」

「カスタム社とプロフィット社はしのぎを削るライバル社ではあるけど」
「色んな部分で業務提携をしていて、部品等の共有をしてコストカットをしているのは知っているだろう?」
「特許も生産台数の制限等はあるものの互いに融通し合っている」

「先代社長時代からは考えられないことなんだが、現社長同士妙に気があって居るみたいでね」
「数名のプロジェクトでカスタム社に派遣することになった。膝をつき合わさないと決められないこともあるからね」
「君は渋谷に自宅があったね。直行直帰でかまわないよ」


部長はひとしきりしゃべると、山城の返事を待つことなく肩を叩いて去って行く。


「カスタムか・・・・・」


翌週、山城達5名はカスタム社に送り込まれる。
山城を除く4名は、社用車のトヨタアルファードに乗って。
銀座のプロフィット本社を後にする。

山城は、タクシーで渋谷カスタム本社に。

本社玄関前で待ち合わせて、カスタム社それぞれの担当者と調整に入った。

昼食時、プロフィット社員で外食に出ようとした際、噂を聞きつけたのか、
総務課の名取と大下が駆け寄ってくる。


「山城さん、お久しぶりです」

「やぁ、君たち。元気だったかい?」


二人からはパーティーの時に見せた高圧的な態度は失せて、
どこか女子学生のそれが感じ取れた。


「今からお昼ですか?」

「うん、渋谷周辺には疎くてどこか美味しいお店は知らないかい?」


二人はプロフィット社員を一瞥した後、


「美味しいところにお連れしますけど・・・・・」


そう言って、また社員達を見る。


「山城君連れて行って貰いなさい。かまわないよ」


年長のプロフィット社員が気を利かす。


「いえ、そういうわけには」


二人から候補の店を聞き出し、5名で外出する。
二人は触れなば落ちんといった表情で山城を見送る。


「君はどこに行っても人気があるね」

「いえ、先日のパーティーで一緒だったものですから」
「それより、今回は谷口は来ていないのですね」


企画開発からは別の者が参加していた。


「そうなんだよ。急遽変更になったみたいだ」

「なにかあったんですか?」

「わからないなぁ」
「社長がお決めになったとか聞いているが詳しくは・・・・」


昼食を摂って、カスタム社に戻りエントランスを歩いていると、


「白山君!」


小さいがはっきりと聞き取れる声がした。
プロフィット社員は誰も気がつかなかったのだが・・・・・・

山城は反応して声のする方に振り返った。
振り返りざまに反応したことを悔いた。


「ちっ!ミスった!」


声の主は、鵜飼玲子だった。











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  1. 2017/08/28(月) 00:00:00|
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余録122 萬年筆奇譚 第4章 疑惑篇3節

プロフィット社経理課。デスクに座り新開発商品の予算書に目を通す。
予算書を見る限り、あくまでも自社制作で金型からの子会社発注となっている。

研究室等で自作する費用として予算が組まれており、
増額分の補正予算が計上されている。


「でたらめか」


誰かが開発費を横領をしているようだ。


どうする・・・・・
こざかしいことをするより、正面突破の方が良いかもしれない。




「水男!久しぶりだな」

「やぁ、山城か。この前はすまなかったな」

「どうしたんだ?お前らしくない」

「いや・・・・お前のすごさに少々劣等感を持ってしまった」


パーティーでの乱痴気騒ぎのことなのだろう。
男としての自信をなくしたように見えた。


「お前に聞きたいことがあるんだ」

「?」

「仕事が終わったら、ここに来てくれ」


そう言ってホテルラウンジを指定する。


20時を回った頃谷口は指定されたラウンジに姿を現した。


「呼びつけてすまなかった」

「かまわないが、どうしたんだ」


山城は、ゼロハリバートンを開けると、経理台帳の抜粋を差し出し、


「この台帳には全く不備はない」
「しかし、現地調査で不正が行われている事が分かった」


台帳をパラパラめくりながら、


「金のことは・・・・専門外だ。わからん」

「補正予算を組んで5000万円払い出したが、開発には使われていない」
「ここだけではない。他の町工場にも足を運んで聞き込んだが、形跡がない」


山城は、さも聞き込みを複数の工場にしたようなハッタリを言った。


「だから・・・・よく知らないんだ」

「そうか、ではこれをマスコミにリークして調べて貰ってもかまわないんだ」

「マスコミ?社の上層部ではなしに?」

「そうだ、黒幕が社長かも分からないからな」
「しかし、社長から調べて欲しいと命令を受けた」
「公になると、背任、横領。社の株は暴落だ」


「ま、待て」「どうすれば良いんだ」

「水男が関わっていないのなら心配することもないだろう」

「い、いや、そうだけど」

「正直に話すなら、マスコミは待っても良い」


山城は、谷口の目をのぞき込みながら
ポケット内ボイスレコーダーのスイッチを入れた。


「本当のことを話すよ」


そう言った水男は山城に打ち明けだした。

開発費は会計計上した後、子会社の零細町工場に丸投げをして、
開発をさせる、それを本社開発担当者は共同開発の名目で監視する。

さらに、追加で補正予算を計上し、帳簿上は支払われたことにして、
本社内で処理される。

そうして宙に浮いた膨大な開発予算は、カスタム社、プロフィット社を
合わせて数十億規模に上るという。

もちろん、法人税もごまかしている。

予算を2人の社長は裏献金等に使用して、
社の存続を図る資金としていること。


驚く内容が谷口の口から出てきた。

山城はにっこり笑いながらボイスレコーダーのスイッチを切った。


谷口を問いただした後、一つの疑問が残った。


「なぜ、プロフィット社長は予算調査を依頼したのだろう?」


























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  1. 2017/07/24(月) 00:00:00|
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プロフィール

銀狐

Author:銀狐
雲の近くで紙と筆。本と工藝。
旅・食・美・創・観に魅せられ
鳥・虫・石・艸・風と交わり 閑暇を纏う。

強烈な文具好き。
LAMYとrotringの熱烈な信者であり、
montblancに憧れ、pelikanを愛し、
moleskineを人生のパートナーに迎え、
RHODIAを愛人にして、
Rollbahnと浮き名を流す。

burlingtonにトラベラーズノートと
ファーバーカステルを詰め、
PerkerとfILOFAXを広げた所が書斎。

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